教師、保育士らの性犯罪歴チェック制度を 被害児童母らが会見で訴え

教師、保育士らの性犯罪歴チェック制度を 被害児童母らが会見で訴え
毎日新聞 2020/7/14(火) 21:06配信

 ベビーシッターマッチングアプリ「キッズライン」の登録シッター2人が性犯罪容疑で逮捕されたことを受け、保育事業などを手掛ける認定NPO法人「フローレンス」(駒崎弘樹代表理事)は14日、東京都内で記者会見し、保育・教育従事者の性犯罪歴をチェックし就業を制限する制度「日本版DBS」の創設を求めた。今後関係省庁に提案書を提出する。娘が性被害を受けた母親2人も同席し、「日本は、性犯罪の前科者であっても保育・教育現場で働けてしまう。これ以上、犠牲になる子どもを出してはいけない」と訴えた。【山内真弓/統合デジタル取材センター】

 「DBS( Disclosure and Barring Service)」は、イギリス法務省が管轄する犯罪歴チェックを行う公的サービス。個人の犯罪履歴がデータベース化されており、一定年齢以下の子どもと関わる仕事をする人は、ボランティアも含めてDBSに照会し、犯罪履歴がないという「無犯罪証明書」を発行してもらう必要がある。無犯罪証明書なしに働くことや、証明書のない個人を働かせることは違法で、働き手だけでなく雇用者も罪に問われる。

 日本では、罪を犯して免許が失効しても、教員免許なら3年、保育士資格なら2年たてば再取得できる。フローレンスは「行政の仕組みなしに、事業者は性犯罪者を判別することができない」と強調。性犯罪の中でも小児性わいせつの再犯率が大幅に高いことなどを踏まえ、「日本版DBSを導入すれば、少なくとも再犯を防ぐことが可能になる」と訴えた。

 会見には、性犯罪の被害児童の母親2人も同席し、制度創設を求めた。キッズラインを通じて依頼したベビーシッターの男から性被害を受けた5歳の女児の母親は、「(娘は)公園の多目的トイレや、(母親が仕事をしていた)自宅の隣室で被害を受けた。逮捕された男性サポーターには『ママはお仕事しているから(ママの部屋に)入っちゃダメだよ』と言われていたようだ」と語った。さらに、キッズラインは事件を受けて、すべての男性サポーターのサービス停止に踏み切ったが、「(そういう対応は)望んでいなかった。男性保育士の育児本に助けられたこともある。男性保育士の活躍の場を奪うことになったのは残念」と話した。

 小学生の娘が性犯罪の被害に遭った母親は「担任の先生に、下着の中から下半身をさわられた」と涙ながらに語った。さらに校長が、その教員を「指導力がある」として、教育現場に戻したことで、性被害が広がった事実も明らかにした。母親は、「(娘は)他の子もみんなされている、嫌だなと思っても恥ずかしい、言ったら怒られるかな、と思って親や周りの大人に言えなかったようだ。子どもたちの幼さや純真さにつけ込む、悪質で卑劣な行為。娘を担当したこの元教諭がすべての教育・保育現場に再び携わってほしくない」と訴えた。

 保育・教育現場の従業者に対する性犯罪歴照会をめぐっては、個人情報保護などの観点や、文部科学省、厚生労働省、法務省などに関係省庁がまたがっていることが障害となり、政府の議論は進んでいない。会見に同席した「無犯罪証明書を求める現場ベビーシッターの会」代表の参納初夏さんは「男性シッターからは、男性というだけで性犯罪者のように扱われるのは残念という声も出ている。制度が創設されれば、自信を持って働ける」と呼びかけた。フローレンスの駒崎代表理事は、「働きたい本人が照会して証明書を受け取るので、個人情報保護上の問題はクリアできる。各省庁は、統合的に(制度創設を)行ってほしい」と早期の論議開始を求めた。

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